副院長 宮田 昌之

最適の治療の窓」を逃さない治療法

 関節リウマチは、以前には慢性関節リウマチと呼ばれていました。「慢性」の文字が抜けて10年ほどたちます。リウマチ学会で「慢性」という文字をなくしたのにはいくつかの理由がありますが、最大の理由はこの病気が決して慢性に経過する病気ではなくなってきたからです。
 最近、関節リウマチは発病してから最初の2年間で病気がもっとも進行することがわかってきました。この期間が治療のタイミングとしてもっとも適しており、「最適の治療の窓」と呼ばれています。
以前までは、関節リウマチは徐々にゆっくりと進行するものと考えられておりました。その結果、まずはリハビリや痛み止めで様子を見て、何年か経過してから次第に治療薬を強くしていく…といった治療法がとられていました。このような方法では「最適の治療の窓」を逃してしまいます。病気をこじらせないために早く診断して早く治療することが非常に大切です。ここで誤解されると困るのですが、最新の関節リウマチ治療では早期に治療すると最大の効果が得られることが期待されますが、早期でないと効果がないというわけでは決してありません。



早期関節リウマチの診断基準

 さて、私たちは、これまで関節リウマチを診断する際に1987年の診断基準を用いておりました。しかし、この診断基準は早期の関節リウマチを診断するために作成されたものではありません。すっかり病像が完成された関節リウマチ患者さまを他の病気から区別するために作られたものなのです。このため、私たちが早く診断したいと思っても診断できないということになります。
 そこで、数年前に日本ではリウマチ学会と厚労省の研究班でそれぞれ早期関節リウマチの診断基準を作成いたしました。2009年には、アメリカリウマチ学会とヨーロッパリウマチ学会と合同で新しい早期関節リウマチの診断基準を作成しました。これからは、このアメリカリウマチ学会とヨーロッパリウマチ学会と合同で作成された新しい早期関節リウマチの診断基準がもととなって、早期関節リウマチの診断基準が完成すると思われます。

関節リウマチの治療 第1のポイント

 関節リウマチの治療で第1のポイントはメトトレキサートを副作用なく使いこなせるがどうかにかかっていると思います。メトトレキサートはこれから述べる生物学的製剤より遙かに安価で、効果は生物学的製剤を使用しなくても多くの患者さまの病状を抑えることができます。



関節リウマチの治療 第2のポイント

 第2のポイントは生物学的製剤の使用です。現在、生物学的製剤には8種類あり、それぞれの特徴を把握して患者さまにあった治療をすることです。それぞれすばらしい有効性と使用上の注意点を持っています。関節リウマチでは関節の破壊が起こりますがこの破壊に関与しているのは破骨細胞という骨髄にある細胞です。破骨細胞の成熟、増殖に関わるのが腫瘍壊死性因子(TNF)といわれる物質です。このTNFを抑制するのがレミケード、エンブレル、ヒュミラ、シンポニー、シムジアという薬です。炎症にも強く関与するTNFは関節リウマチにおいて中心的な役割を果たすサイトカインです。レミケード、ヒュミラ、シンポニー、シムジアはこのTNFに対するモノクローナル抗体で中和することによってTNFが作用しないようにします。エンブレルはTNFのレセプタでレセプタを注射することによってTNFが細胞表面のレセプタに作用しないようにします。また、日本で開発されたアクテムラという薬はインターリウキン6のレセプタ抗体で、インターリウキン6の作用を抑え、ひいては破骨細胞や炎症を抑え、関節リウマチの病状を著しく改善します。



オレンシアは免疫の中心的な役割を果たすT細胞の過剰な活性化を抑える薬剤です。いま、話題の免疫チェックポイント阻害薬にも通じる作用機序を持つ薬剤で一定の患者さんには非常に有効です。



生物学的製剤による治療

 当院では生物学的製剤を延べ512名の関節リウマチの患者さまに使用しており、ほとんどの患者さまたちはその有効性に満足しています。これらの薬剤は関節リウマチの炎症を抑える作用のみならず、これまでの薬剤ではとうてい期待できなかった関節破壊を改善する効果も認められています。



JAK阻害薬による治療
 当院ではJAK阻害薬による治療を延べ54名に行っております。生物学的製剤との違いは第1に生物学的製剤が注射薬であるのに対して、JAK阻害薬は経口薬であることです。よって、投与が簡便であるのが大きな特徴です。第2の違いは生物学的製剤が免疫・炎症のあるところをピンポイント的に抑えるのに対してJAK阻害薬は幅広く免疫・炎症を抑えることです。長時間にわたって抑制すると副作用など支障が出ますのでごく短時間のみ作用することによって副作用の出現を抑えております。
生物学的製剤とJAK阻害薬がリウマチ治療に登場したことによって多くのリウマチ患者さんを治療することができるようになりました。

 これらの薬剤は患者さまによって向き不向きがあります。関節リウマチでお困りの方は、担当の先生にご相談の上、是非これらの薬剤の使用についてご検討されることをおすすめいたします。